地方へ新しい人の流れを作り「地方創生」を実現させるためには?
新型ウイルス感染症対策の一環として、政府のテレワーク推進も後押しし、新しい働き方やライフスタイルへのシフトチェンジが進みました。「出社を前提としない」「働く場所にとらわれない」という考え方が浸透し、本社機能のある都心部に住まいを構える必要性が薄れ、社員の居住地を問わないという企業も増えてきました。
ネットワーク環境さえ整っていれば、どこにいても仕事ができるようになり、実際に郊外や地方への移住を検討する方が増えています。
今回は地方移住を検討している方に、移住パターンの事例をご紹介していきます。
目次
高まる地方移住ニーズ
以下は、内閣府の調査した地方移住への関心度合いの変化の結果です。
参考:令和2年6月 内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
地方移住の3つのパターン
移住先となる地域に所縁があるかどうかで、地方移住の形態は大きく3つに分けられ、「UIJターン」といった呼び方をされることがあります。
Uターン
地方で生まれ育ち、就職や進学で地方から都心部へと転居した人が再び、自分の出身地に戻るパターンを「Uターン」と呼びます。例えば、「熊本県で生まれ、進学することがきっかけで東京都へ移り住み、就職や転職をきっかけに熊本県へ帰る」場合が挙げられます。
自分の生まれ育った地域に貢献したい、地元にいる家族と暮らしたいといったパターンに見られるケースです。
Iターン
生まれも育ちも都心部だが、就職や転職をきっかけにして地方に移住するケースを「Iターン」と呼びます。例えば、「東京都でうまれ、都内の大学に進学・就職したが、地方生活にあこがれをもって熊本県内の企業に転職し、移住する」といった場合が挙げられます。
転職という選択肢をとらず、現在就業中の企業に在籍したまま、生活の拠点を地方に移すということもテレワーク推進企業では実現可能です。
働く場所にとらわれることなく今の仕事を続けたいという場合に「Iターン」という選択肢はぴったりの考え方といえるでしょう。
Jターン
進学や就職をきっかけに都心に移住した後で、比較的出身地に近い地方都市に移住するパターンを「Jターン」と呼びます。自分の出身地に戻らないことがUターンと異なります。例えば、「熊本県で生まれ、進学をきっかけに上京。その後、出身地に比較的近い福岡県に移住する」といったパターンが想定されます。地方で生活したいという一方で、仕事環境も選びやすく働く親世代にオススメな移住パターンです。
地方移住から考える「地方創生」
ここまで地方移住の3パターンを紹介しましたが、コロナ禍以前から、東京一極集中の是正に向けた取り組みとして「地方創生」戦略が掲げられ、移住定住のみならず、地域との交流に関わる政策が推進されていました。
その中で言われているのは「関係人口の創出」という考え方です。
関係人口とは「その地域に関わってくれる人口」のことでその地域に関心を寄せる・関与をもつことを言います。
関係人口論からの展開
関係人口と一言で言っても、関わり方の概念は様々にあり、無関心の段階から定住に行きつくまでプロセスを踏みながらだんだんと強く地域への関わりを深めていくという考え方があります。それを「関わりの階段」といいます。
例えば、観光地(目的地)への移動中の偶然の訪問をきっかけにして、
- 地域の特産品購入
- 地域への寄付(ふるさと納税など)
- 頻繁な訪問(リピーター化)
- 地域でのボランティア活動
- 二拠点居住
- 移住・定住
こういった、様々な関わり方を前提としたプロセスモデルが確立されており、その中でも移住・定住はステップの中でも最終段階となります。
地方創生を実現するための地方移住
先に述べた、UIJターンのなかでも、特に地方へ所縁のないIターン者にとってはその地域を選択するきっかけがない限り地方移住への動機は生まれにくいといえます。しかし、地方創生を成し遂げるためにはそういった無意識の層をいかにその地域に目を向けさせるかが重要になります。
それではその層が移住を検討し、その地域に根付く・定住させるためにはどういったことがポイントになるのでしょうか。
地方移住を成功させるためのポイント
仕事先を決めておく
移住してから仕事を決めるケースもありますが、移住前にあらかじめ仕事を決めておくことがオススメです。民間の求人サイトのみならず、近年は道府県・自治体が移住者向けの求人サイトを整えており、求職者をサポートする制度も増えています。
制度を活用し、移住前に就職先を決めていれば、移住直後の収入も担保されるため、安心して移住生活を始めることができます。
地方生活を体験してみる
最近はワーケーション等で、働く場所を問わず業務にあたれることもあるため、実際の地方生活を短い期間で体験しながら、移住を検討することも可能です。
これも「関わりの階段」の中での3段階目「頻繁な訪問」として、まずはその地域のファンになることから始めるステップの一環になります。
二拠点居住を検討する
いくら「働く場所にとらわれない」という考え方が進んでも、どうしても仕事の都合上移住までは踏み切れないパターンもあります。その場合には二拠点居住というプロセスもあります。
すべての地域で移住・定住という人口を増やすことは難しくとも都心の住民が地方にも生活拠点を置くことで、多様なライフスタイルの視点を持つことができ、その地域への関心を呼んだり、訪問へと繋げたりすることができます。
まとめ
今回は地方移住という視点からみた「地方創生」という点について述べさせていただきました。
段階的に移住することも検討し、地域の方とのつながりを作って、情報を収集するのもおすすめです。また、市町村によっては、移住のお試し住宅や、現地ツアーを行っているところもあるので、有効に活用したいですね。