【活用事例】山都町の観光DX:人流×デジタルマップ×購買データで解明した新しい回遊導線

観光DXが叫ばれる一方で、
「何から始めたら良いのかわからない」「結局、データを取っても活用できない」
という声を多くの自治体から伺います。
熊本県山都町では、東芝デジタルソリューションズ株式会社と連携し、観光デジタル基盤の整備からデータ取得、分析、利活用までを一体的に実施しました。
本記事では、その実践内容と得られた示唆を“自治体が再現できるポイント”に絞ってご紹介します。
目次
山都町が直面していた観光課題(データ活用が必要だった理由)
山都町は、国宝・通潤橋をはじめ豊かな自然や文化資源を持つ地域ですが、以下の課題がありました。
- 紙媒体中心で、観光客データの蓄積が未整備
- 地域に滞在する観光客の行動が“見えなかった”
- 来訪者の回遊・消費動向の把握が難しい
- 多言語対応が不十分で、インバウンド受入に課題
これらは全国の中小自治体と共通する課題であり、山都町が取り組んだプロジェクトは全国で再現しやすいモデルケースでもあります。
山都町が実施した観光DXの全体像
① デジタル観光マップの整備
デザイン性の高いデジタルマップを制作し、観光スポットを多言語で表示。閲覧データからスポット別ランキングや人気導線が可視化されました。
例:通潤橋・五老ヶ滝・ミエルテラスが上位にランクイン

② Wi-Fiセンサーによる人流データ取得
町内7カ所にWi-Fiセンサーを設置し、
- 日別/月別/天気別
- 時間帯別
- 施設間の回遊
- 県内外・インバウンドの訪問比率
が把握できる仕組みを構築しました。
特に判明したのは、
「清和文楽館 ⇄ 道の駅清和文楽邑」「通潤橋史料館 ⇄ 通潤橋ミエルテラス」
が強い回遊を形成している点です。
③ レシートキャンペーンによる購買分析
観光客がLINEでレシートを撮影・送信する“レシート分析”を導入。496枚の購買データが収集され、飲食・物産の傾向が明確に。
11:00〜14:00に購買が集中/産直野菜が人気 など、地域の購買動向が可視化されました。
▶️ レシートキャンペーンの具体的な仕組みはこちらの記事でも詳しく紹介しています。
④ 1,413件の観光アンケート
日帰り旅行の割合、家族利用、情報収集の手段など観光DXの基礎となるユーザーデータが大規模に取得されました。
日帰り比率70%以上、家族・友達利用90%以上など、地域特性に即した観光マーケティングの基礎が形成されました。
データから見えた「山都町の観光構造」
1:回遊の強い導線と弱い導線が明確に

強いルート:
- 通潤橋エリア
- 清和文楽エリア
弱いルート:
- やまと文化の森(単独訪問が多い)
この差により、回遊を生み出す“ハブ施設(地域の中心拠点)”がどこか明確になりました。
2:県外誘客の伸びしろが大きい
通潤橋周辺では県外・九州外からの来訪が10%前後と他施設より高く、「どこに広報投資をすると効果が高いか」が可視化されました。
3:外国人は“文化・自然”コンテンツへの関心が高い

清和文楽館や通潤橋エリアに外国人が集中し、台湾・香港に加え中国からも一定の割合があり、アジア圏のターゲット性が高いことが判明。
4:購買データから地元ニーズと観光ニーズの違いが見えた
道の駅では産直野菜が売上上位になるなど、地元利用・周辺エリアからのリピーターの存在が可視化。刷新すべき商品棚や売場づくりの方向性が明確になりました。(分析対象:496枚のレシートデータ)
本取り組みが自治体にもたらした価値
✔ “勘”ではなく“データ”で判断できるようになった
回遊導線・ピーク時間・滞在時間・購買時間・外国人比率など、これまで把握できなかった要素が見えるようになりました。
✔ 観光投資の優先順位が明確に
- どの施設に誘導施策を打つべきか
- どのエリアをハブにすべきか
- 県外誘客の有望エリアはどこか
など、施策判断の精度が大きく向上。
✔ 住民・観光客双方を対象にした本質的なデータ基盤が整備された
地元利用・周遊観光・県外誘客の構造が一本で分析可能に。
自治体が「小さく始めて大きく活かす」ための観光DXモデル
山都町の事例は、ICT(情報通信技術)をフル導入する大規模プロジェクトではなく、既存設備を活かしながら段階的にデータを取得し、その後の観光戦略に活かす実践モデルです。
自治体が観光DXに着手する際は、まず以下の3点を整えることが重要です。
- 観光導線の可視化(デジタルマップ / 人流)
- 消費行動の把握(レシート / 決済)
- 地域の実態把握(アンケート / CRM)
これらを統合することで、「観光誘客 → 回遊 → 消費 → 関係人口」の循環が持続的に生まれます。

まとめ
観光DXは、ただデータを集めるだけでは意味がありません。
集めたデータを「次の施策へつなげる仕組み」と「現場で確実に運用できる体制」を整えることで、地域のストーリーに合った持続的な観光サイクルが生まれます。
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データイノベーション営業部地域の課題をデータ活用して解決することを目指す 活動している。
特に来訪客の購買データを活用した人軸の行動分析を地方自治体、DMO と行っている。
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